このページは教育キネシオロジーとブレインジムの新しい動きをお 伝えするものです。
今回は次の2点をご紹介します。
□『EDU-K UPDATE』12月号の抜粋翻訳
□創設者ポール・デニソン博士のインタビュー記事  こちらから


---------
 EDU-K UPDATE 2008年12月号より抜粋
---------
◆ブレインジムを学び・教えておられる皆さまへ
(今回は事業本部長Cindy Goldadeさんからのメッセージです。)

このところ夢中になって読んでいる本があります。『笑うまで泣きなさい:深い悲しみと上手に向き合って、元気にしてくれるガイド』という、リチャード・J・オーバーショウという人の本です。その中で「死別(bereavement)」と「悲嘆(grief)」と「哀悼(mourning)」を区別しています。死別は奪われて喪失した状態です。悲嘆は喪失感によって至る感情であり、その感情を表明することが哀悼です。「あなたの悲しみと嘆きの深さは、喪失した対象に、あなたがどれほど自分自身を注ぎ込んできたかによって決まります。」

このサイクルは死に関するだけではありません!私は人生の諸々の仕事や趣味に、心のエネルギーをたくさん注いでいます。その結果、事業本部長としてこの動的な組織のために、またブレインジムのインストラクターとして、個人的には母、妻、娘、姉妹としての役割から、いくつか緊迫した道のりの舵取をしています。

先月殊更むずかしい問題を抱えて嘆いていたのですが、友人は年齢を重ねるごとに、どれほど体験の領域(サークル)が広がり、飛躍的に成長していくことだろうと賢明な言葉をくれました。北半球の冷たい12月は、自分の領域を振り返るのによい時期だと思います。自分の領域はどのくらい成長したのだろう?学びは何だったのか?祝えるものは何だろう?と。

ブレインジム・インターナショナルにとっては、この年得たたくさんの体験を承認するための一休みとなります。アフィリエイト(関連団体)からウェブサイトに至るまで、その中間にあるもの全てにおいて達成された成果を祝います。
喪失の痛手が生じたかもしれないところに目を配ります。私達のサークル(領域)は広がり、サイクルは続いていきます。

どうぞ皆さんの体験のサークル(領域)がますます広がっていかれますように。人生の有り難さよりも重荷をいっそう深く感じるような時期には、その瞬間にいる方法を見出されますように。そして時が来たら乗り越えて前に進む助けをしてくれるツールがあることを知って下さいますように。



◆「EDU-Kの秘訣」より (担当 Deborah Scott Studebaker)
創設者ポール・デニソン氏が最近コース中に述べられた言葉で、心に響いてくるものがありました。

「皆さんは目標を設定することによって学ばれるのですが、創造力がないと学べません。創造力を使うと、すでに新しい神経経路を作ることになります。(ブレインジムの)バランスでは、その新たな意図を実行に移すわけです。」

バランス過程のように、学びとは、自分のいるところを認めて、そこからどこに行きたいと思っているのか察知することです。変化への準備ができているクライアントは最大の結果を得るということを、自分の実践から知っています。私がいつも関心を払うのは、クライアントが「その新しい意図にしたがって生きる」ために、どうしたら一番効果的にクライアントの優先順位に照準をあわせられるだろうかということです。
皆さんはどうされますか?ブレインジム・インストラクターの方々にその戦略を聞いてみました。

Kathy Brownさん (アリゾナ州フェニックス)
子供達に次のような質問をするところから、一日を始めます。
「学校で楽しいこと、楽にできることは何?」「何が難しいかな?」
「難しいことを、楽にできることと同じくらい楽しみたいと思う?」
「そういうことができると想像できるかな?」

MaryLynn Thomsonさん(カリフォルニア州レッドランド)
例えば親御さんは読むことが上手になるようにバランスをしてほしいと思っているのに、当の本人はサッカーが上手になることを目標にしてしまうという場合があります。そういう時には、「サッカーも読むことも、両方一辺に上手になれるって知っていたら、君はそうしてみたいと思う?」と尋ねます。

Bobyn Bettsさん(カリフォルニア州エスコンディド)
10代の男子に何について改善したいのか尋ねたら、「何にもない」という答えが返ってきたことがあります。そこでアプローチを変えてみました。その子供が5年後にどうなっていたいのか考えてもらい、そこからバランスの作業に入ることにしました。

Shoshana Shambergさん(メリーランド州バルチモア)
目標設定の時に次のような質問をします。
●〜に関して、あなたがまだ成就していないことで、何か達成したいものがありますか?
●ご自分にとって課題であることと、もっとつながりをもち、力強く、心をこめて、あるいはくつろいで体験したいことは関連性がありますか?
●頭の中を巡る否定的なメッセージで、あなたが変えたいと望んでいるものは何ですか?あなたはどういうことを聞きたいですか?

意欲と想像力があるところから変化が始まります。問題となっている事柄に至るためには、自分のいるところに気づく必要があります。つまりKathy Brownさんが言うように、生き生きとした記憶がよみがえってくるように、そのボタンを押すわけです。今ここにいて、その瞬間に可能性として表れる他の何かを心に描くことで、私達は新しく意図した方向に動いていきます。


● ハワイで始まった、ブレインジムを使う公益事業について
Karen Freesia Petersonさんが所属するギヴィング・バック(Giving Back)は、年配の市民が子供達や弱い高齢者のメンター(信頼のおける相談相手)となる各種プログラムを実施するハワイの非営利団体です。そこで彼女が企画したボランティアのプログラムは、皆でブレインジムやその他の統合的動きを一緒に行って、一人一人の認識、バランス、調整する力と幸福感を高めようというもの。この活動が認められ、個人や団体の行うボランティア活動に対して州知事が授与する、最高の栄誉賞候補として最終選考に残っています。

2008年1月
最初に行われた評価では、参加した高齢者がより安定した動きで座ったり、立ったり、歩いたりするために必要とされるバランス面での改善が明らかになりました。第三者の研究家による調査結果によると、高齢者の人たちのストレスと緊張が緩和され、各セッションの終了時には全般的に心身の幸福感が改善されたと記載されています。

最も顕著だった成果は、
_ ブレインジム・メンタリング・プログラム(BGMP)を行う以前よりも、 助けを借りずにあるいは少しの助けで、参加者の座った姿勢から立ち上がる動きを行う能力が際立って向上。
_ 参加者の適切な姿勢で歩行する能力が顕著に向上し、BGMPの前に比べて下を見る必要性が減った。
_ 参加者の注意を払う領域と認識力が改善される。
_ 参加者とメンターの両方から、BGMPの体験を通じて相互に取り組み関わり合うことへの満足感が表明される。

2009年1月
このプログラムはマウイにあるハワイ州保険局の部局長ならびに治療者のグループによって、医療費の削減に関する分析や転倒防止への効果など、全面的に評価されることになる。その結果は下記のホームページに掲載される。
www.GivingBackMentoring.org



◆Ask Daveコーナー (DaveによるQ&Aから)
Q: 小学校の音楽教員です。あなた方のプログラムに関心を持っています。そもそもブレインジムの動きは音楽的なのでしょうか。音楽の授業に組み入れることは可能ですか?

A: Donna Sewellさんがちょっとした研究を行っています。学術的な雑誌に発表していないのですが、音程計測器を用いて、ブレインジムの動きが生徒達の音程を合わせる能力を改善すると示唆しています。音楽教師のなかにも、授業にブレインジムを取り入れることで、音程やリズムを合わせる能力が改善し、生徒達が注意を払って授業に参加していると報告している人たちがいます。ブレインジムのエクササイズが音楽的かどうかは分かりません。動きにリズムのあるエクササイズもありますが、本を読んだり、文字や音符をたどるのに必要な視覚能力の向上に役立つもの、口頭での表現を助けるものなどあります。

授業とエクササイズを連携する主な方法は、いくつかの動きを授業の開始前に行い、生徒達の学ぶ準備の手助けにすることです。授業中に2つか3つエクササイズを取り入れると、生徒達が授業についてくる助けにもなり、授業の中で取り組んでいる特定の技量の改善にも役立ちます。


※記事の全容を英文でお読みになりたい方は下記へアクセスして下さい。
http://braingym.org/brochures/newsletter/December_2008.html


---------
ポール・デニソン博士のインタビュー記事より
---------
下記のQ&Aはデニソン博士の近著「Brain Gym and Me」の発売に際して行われた、リーダー・ビューズ副編集長とのインタビューから抜粋しました。教育キネシオロジーならびにブレインジムについて、一般の方にも分かりやすく解説されています。

Q:ブレインジムについて教えて下さい。
A:ブレインジムは体を動かすプログラムです。その動きが神経を活性化して、新しい経路を構築することにより、認識への準備と知的学習能力の向上を図る効果があると知られています。ブレインジムは学校、職場、スポーツの分野で日常に用いられています。また自己の可能性をもっと十全に実現したいと望む、全ての人に役立つものです。

Q:あなたが開発された、動きに基づく学習様式は、教育キネシオロジーとして知られています。この意味は何でしょう?ブレインジムとの相違も教えてください。
A:教育とは、「引き出す」あるいは「導きだす」という意味です。つまり、誰もが学ぶべき知恵を体に宿しているという意味が根底にあると思います。キネシオロジーとは動きの研究です。教育キネシオロジーは、学びに特化した、動きに関する包括的な科学であり言語です。ブレインジムは、その一つのプログラムで一番よく知られているものです。それからEDU-K(エデュ・ケイ)はEducational Kinesiology(教育キネシオロジー)の略です。

Q: 動き、学び、脳の発達は、それぞれどう関わるのでしょうか?
A:すべての学びに動きが内包されています。つまり神経ネットワークを伴う体と心(知)の動きです。動いて、遊び、活動し、世界と関わり、生活技能をマスターしながら、私達は文字通り脳を構築して発達させています。動きなくして脳は発達しませんし、その逆もないわけです。

Q:このエクササイズは、実際に神経にはたらきかけて新たな経路を構築するということですが、一見して簡単そうな動きがどのようにして神経ネットワークを構築するのでしょうか?
A:全ての動きが神経経路を構築します。神経経路を構築せずに動くことはできませんから、誰もが神経経路の構築を体験しています。私達はそれを「学ぶ・習う」という形で知っています。例えば自転車の乗り方を習得された時、どんな感じだったか覚えていらっしゃるかもしれません。最初はバランスもとれず、動きも調子が合わなくてころぶでしょう。練習するにしたがって前庭バランスがとれてきて、ペダルを動かす体の運びを学んでいきながら神経経路がつくられ、その一連の行動を繰り返すことができるようになります。この神経経路は、その10分後にはあったわけです。それは未来もそこに継続してあります。なぜならその体験が神経経路を作り上げたからで、その学びがこの動きと結びついているからです。

Q:あなたの近著「Brain Gym and Me: Reclaiming the Pleasure ofLearning(ブレインジムと私:学ぶ楽しみを取り戻す)」から読者が期待できるものは何ですか?
A:私の本は子供たちを愛するすべての人たちへの呼びかけです。また「動きは学びへの扉」という前提を受け入れて、充実して満たされた人生を送りたいと願う全ての人たちに向けられたものです。私達の動き方は、この世でのあり方です。どういう風に動くかが、どのように人生を作り脳をつくり上げているかを決定します。物語、メタファー、現実のケース・スタディを通じて、全ての人が自分の人生を引き受けたところから動き・成長していくためのスペースをつくっています。読者はこの本を好きになってくれると思います。読みやすいし、自分で学ぶためにも他者を教える際にも実践的なガイドとなるでしょう。

Q:このエクササイズを実践して、違いに気づきはじめるまでにはどのくらい時間が必要でしょうか?
A:ブレインジムのプログラムを受講した生徒さんの報告によると、規則的に毎日ブレインジムの動きを10分〜20分行えば、1週間〜6週間の内に大きな変化を感じられるそうです。即座に得られる自信と落ち着きしあわせ感があるので、このプログラムに留まれるのではないでしょうか。

Q:学びに対するどのようなタイプの障害に対して、この新しい本は助けになるのでしょうか?あなたの学習テクニックは、特に学ぶことに対する問題はないけれど、学びの可能性を最大限に引き出したいと思っている読者にも役立つのですか?
A:いわゆる学習障害にも、また自分の可能性を最大限にひきだしたい読者にも、この本は段階的なガイドとなります。ブレインジムのプログラムは、もはや役に立たない自分のパターンから脱け出して、結果を生み出すことができる効率的で有効なパターンへと統合する方法です。

Q:このテクニックはどんな年代の人たちにも使えるものですか?特に大人向けのセラピーでは注意をひきつけておくのが難しい子供たちに対して、あなたはどんな方法をとられるのですか?
A:子供たちは元々、運動感覚をとおして動きから自然に学んでいきます。ブレインジムのプログラムはセラピーではありません。「レディネス(=教育が有効に行われるための下地・条件が整うこと)」のプログラムと呼ばれています。子供たちと一緒にブレインジムをすると、お互いに 遊び、関わり、教え合い、学ぶための準備ができます。

Q:これまで研究してこられた成果から、子供と大人を比べてみると、大人の脳の方があなたのテクニックを使って効果を得るには、もっと時間がかかるのでしょうか?
A:学ぶことは誰でも好きですし、その過程において誰でもつまずいたりイライラしたりすることがあります。もし学ぶ目標と意図が明確ならば、子供も大人も違いはありません。ブレイクスルーに準備ができている人ならば誰でも、瞬間に学ぶことができます。

Q:あなたのテクニックの一つを説明してくれますか?
A:それではレイジー・エイトについて説明します。読み書きを上手に行うためには、正中領域という正中線で効果的にはたらくための領域、つまり体の左右の部分が同時に、あるいは別々にはたらく中心部分にアクセスすることが必要です。生存に関わる反射は私達を正中線から引き離します。多くの生徒は正中領域で機能する準備が整っていません。レイジー・エイトの動きは、数字の8を横にした形をなぞる動きですが、常に正中領域から出発しそこに戻るという様に、中心を通過する動きです。この連続的な動きのパターンが、近点で集中してフォーカスするはたらきを改善し、視覚がより統合的に機能するようになります。

Q:きっと多くの人たちが、このシンプルな動きで実際にそれほどの効果が得られるということを、なかなか納得できないのではないかと思います。そういう人たちに、どう伝えられますか?
A:伝えるのに一番難しい点は、それがどんなに簡単かということです。ブレインジムは安全で自然な動きですが効果があります。説明も理解も後からついてきます。ですからただやってください。結果自体が語ってくれます。

Q:ブレインジムが日常的な問題、例えば落ち着きのなさや忘れっぽさ、また昨今の大きな問題ストレスなどを、克服する助けになることは分かりました。でもどうやってそうするのでしょうか?
A:ブレインジムのプログラムは、学びに必要な身体技能を教育します。そしてこういう技能はめったに教えられることがなく、大抵は当たり前にできることとされています。私達が学ぶ上で身体的に心地よくないとしたら、 楽に考え、憶え、あるいは知的に処理することはできません。ストレスがあったり、骨の折れること、不安があるところでは学べません。ブレインジムのプログラムは身体技能が楽に運ぶよう導き、それから明瞭に考えるための準備を整えます。

Q:あなたはADHDやADDという多動症候群に対して、すばらしい成果をあげられていると理解しています。こういう障害についてのあなたの見解と、どうしてブレインジムがそういう問題に役立つのかをお聞かせ下さい。
A:生徒に対するそのようなレッテルは、学習のための下地が身体的に整っていないこと・条件が欠けていることにより、勉強のプログラムに参加する 準備ができていないことを物語っています。ブレインジムのプログラムは、子供が今いるところで、子供自身にとって一番望ましいペースで出合います。そこを出発点にして、子供が安全で、居心地よく、学ぶ準備ができるように導きます。「学習障害」というのはありません。子供が必要としていることを物語る行動・振る舞いがあるだけです。私達が耳を澄まして聞く気持ちがあれば聞こえてきます。

Q:デニソン博士、あなたは成長する過程で、ご自分の問題を克服されてきました。今日のあなたの仕事に、ご自身の履歴が、どういう風に方向性を与えてきたのかお話し下さい。
A:私は同年代の子供たちと同じペースでは学びませんでした。読むことができなかったので4年生を落第したのです。自分が「人より劣っている」「壊れている」という風に感じされられました。私はこのキャリアを、自分と 同じような生徒たちに捧げてきました。他の子供たちと同じペースで学ばないことを、決して恥しく思うことなどないようにと助けてきました。

Q:この「恥・不名誉」な気持ちが、子供たちを不活発にしています。今日この問題が子供たちの間でどのくらい広まっていると思われますか?またこういう問題に取り組まなければ、長期的にどんな影響が子供たちにあるとお考えですか?
A:「不名誉」と「失敗」は、点数、競争、評価を求める今日の私達のシステムに内在しているものです。ほとんどの人が、自分が十分優秀ではなく、仲間に入っていないことを、早くから学びます。成績優秀者ですらそのシステムの犠牲者です。自分のために考えることができず、自分を表現できず、創造するリスクをとりたくない人間として、私達は置き去りにされています。

Q:神経科学の分野で、あなたの一番大きい功績は何だと思われますか?
A:神経科学は私が30年以上、教育者として観察してきたことを、日々追認してくれます。脳は可塑性があって自己創造し、動きを通じて継続的に再組織化をはかり成長する状態にあります。私達は行動することによって学ぶのであって、情報を知って学ぶのではありません。情報は経験に基づいて学ぶ人のツールです。

Q:ありがとうございました。最後に何かお考えがありますか?
A:私には一つの世界が見えます。そこでは皆が自分を十分に楽に表現しながら、自由に動いて活動しています。子供たち、生徒、従業員のもてる最上の能力や天賦の才を引き出したいと願う両親、教育者、企業家が、この安全で効果的なトランスフォメーションのための積極的なツールを使っています。

このインタビューの全体を英文でお読みになりたい方は、次へアクセスして下さい。
http://www.readerviews.com/InterviewDennison.html



◆バックナンバー
  EDU-K UPDATE 2008年8月号
  EDU-K UPDATE 2008年11月号
  教育キネシオロジーの創始者ポール・デニソン博士のメッセージ